魔獣と伝道師  

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◆「例の違和感」の正体は? 

 

 出品者から連絡があった。内容は変哲のない事務的なものであったが――最後の出品者の名前にふと目が留まる。

 

小林 XX (こばやしたけし)

 

 え? 音楽プロデューサーの小林武史? いや、もちろん違う。「たけし」の漢字が違っている。ただの思い違い? いや、でもこの感覚は――

 

 不思議な既視感。。。 

 消えない違和感。。。 

 

 何か見過ごしていないだろうか? 

 

… 

…… 

……… !( ̄▽ ̄;) 

 

 実は、たった一つだけ思いあたることがある。でも、まさか――。 

 

 それって、本当にありえないぞ! 

 

◆伝道師の名は。

 

 1980年――。 僕に生涯最大の衝撃を与えたあの雑誌の「究極の魔女」の記事 

  ▸1980年の衝撃

 

 あの記事の扉写真が全ての始まりだったのだ。そして、続く見開きページの記事本文―― 

 

 当時、穴の開くほど何度も隅々まで読み返した記事。その最後に執筆者の名前があったのを覚えている。この筆者が「L-27を愛用している」と書いていたことも。そして、その名前がたしか――

 

 本棚から恐る恐る当時の「Guitar Book」を取り出す。すると

出典:GuitarBook 1981年1月号((株)CBSソニー出版) 167ページから抜粋
出典:GuitarBook 1981年1月号((株)CBSソニー出版) 167ページから抜粋

  

(文・小林たけし)

 

 名前こそひらがなであるが……やはり出品者と同じだ。まさか……まさか……ねぇ。

 

 

 

 実はこれだけじゃない! 

 

 当時のLarriveeカタログがある。 

当時のカタログ表紙
当時のカタログ表紙

 

 「究極の魔女」が表紙を飾るこのカタログは、僕にとってバイブルのような存在なのだが、そこに「小林たけし」氏はLARRIVEE PLAYERとして写真入りで紹介されているのだ。 

 

 そして、その写真で抱えているのが……まさにユニコーン・インレイのL-27!

 

 

右ページの右から2番目がL-27を抱えた小林たけし氏
右ページの右から2番目がL-27を抱えた小林たけし氏

 

 今回の「例の違和感」の正体はこれなのか? もしそうなら、この出品者はLarrivee日本伝来時の伝道師であり、僕をLarriveeの魔道に陥れた張本人ということになるけれど。 

 

 ま・さ・か・! 

 

 もちろん、同姓同名の人違いの可能性はある。でも、そうは思えないなぁ。で、この疑問の解決方法は一つしかない。出品者本人に聞いてみることだ。 

 

 

◆予期せぬ邂逅 

 

 僕「ひょっとして小林様は、当時L-78の記事をお書きになった方でしょうか?」

 

 すると―― 

 

 出品者「当りです。奇遇ですね。」 

 

 !!

 

 やはりそうだった。と、いうことは――

 

 僕「この出品物は、当時のカタログに掲載されていた写真で弾いているあのギターですね?」 

 

 出「そうです。ブルース・コバーンに影響されてラリビー・ギターを購入しましたが、すぐに音楽嗜好が変わって、あまり演奏しませんでした。20年近くほったらかしにしていましたが、弾かれないのはしのびないのでオークションに出品した次第です。」 

 

 ・・・ 

 

 なんという巡り合わせ!

 

 つまり、このギターの正体は――Larriveeの伝道師に仕えた「魔獣・ユニコーン」。「究極の魔女」と並んで「バイブル」に載っている、言わば「使徒」レベルのギターだったのだ!

 

 それが何の因果か、伝説の「魔獣」は伝道師から僕に託されることになったのである――。