3.Larrivee Guitarの時代別考証  

(5) ヴァンクーバー時代前期 1992~1998

 1991年頃から完全に復活したアコースティックギター市場。基本工程の機械化に成功したLarriveeもその流れに乗って飛躍を遂げた。新仕様のLarriveeギターの量産規模を拡大するため1992年に隣の大都市ヴァンクーバーに拠点を移し、そして、ここでも音がよく品質の安定したギターが数多く生産される。

 

 一方、この頃日本でもLarriveeの存在は知られ始め、輸入量は急激に増えてくる。それゆえ一般的にLarriveeギターといえば日本ではこの時代の仕様が最も有名なのではなかろうか。外観では寄木細工のロゼッタが廃され、アバロンパール製のロゼッタになったのが大きな特徴だ

ロゼッタ 左:ノースヴァンクーバー時代後期 右:ヴァンクーバー前期以降
ロゼッタ 左:ノースヴァンクーバー時代後期 右:ヴァンクーバー前期以降

その他、この時代の途中からヘッドの突板の色が黒くなったが、基本構造は1988年以降ほとんど変わらない。

ヘッド突板 左:ナチュラルな木目の1995年頃まで
ヘッド突板 左:ナチュラルな木目の1995年頃まで
右:1995年以降の黒い突板
右:1995年以降の黒い突板

 

  見えない部分では、何時の頃からかアジャスタブル・ロッドの仕様が変わった。それに伴って調整用レンチのサイズが変更になった。また、ナット、サドルのサイズも微妙に変わっている。

 

 注目すべきは、1995年になってラベルデザインが変わったこと。

1982 Updated charubラベル(1995年まで使用)
1982 Updated charubラベル(1995年まで使用)
the last of Canadian issuedラベル・モデル名印字あり(1995年~)
the last of Canadian issuedラベル・モデル名印字あり(1995年~)

 

 それまではヴァンクーバーに移ってからも依然として「ビクトリア製」と記されたラベルが使用されていた。その理由が「注目されず、誰も気にしてなかった」からだという。つまりこの時期にラベルを変えた背景には、Larriveeギターが世間に広まり、認知度が増したことが伺われる。

 

 Larriveeは成功したのだ。

 

 ラベルが変わった1995年以降の製品はもう、仕様的にもかなりの部分で現行製品に近いものとなり、その流れはヴァンクーバー時代後期にそのまま引き継がれることになる。

 

 個人的にビクトリア時代の次に好きなのはこの時代の、特にラベルが変わる前の1995年頃までの製品だ。理由は、変更になったアバロンパール製ロゼッタの見た目が好みなことと、漂う雰囲気がノースヴァンクーバー時代後期よりやや「落ち着いた」ように感じること。というか、復活をかけて意気込んでいたノースヴァンクーバー時代後期の製品にはどこか過剰な「鋭さ」というか挑んでくるような険しさみたいなものを感じていたのが、この時代になってそれが影を潜めたように思える。さらには、これも意図したものかどうか、使用している材の感じがビクトリア時代に近いように思えるのも大きい。


OO-19 1995
OO-19 1995

L-LITE 1997
L-LITE 1997