Sleeping Beauty  

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  それから半年ほど過ぎた2005年夏。ギター一本の演奏形態なら指弾きのインストゥルメンタル系かな、と思い始めたころ。

 

 身の丈に合った二代目Larriveeを手に入れたとはいえ、どうしても気になるのはあの衝撃のL-78と初代L-28。二代目を探した時にも一応気にかけていたけれど、同年代とおぼしきギターにはまだお目にかかっていない。せめて画像だけでも、と、めぼしい楽器屋サイトやYahoo!オークションなどをチェックするのが日課になっていた。

 

 そんな、とある日曜日の夕方。Yahoo!オークションで、出品されたばかりのギターがたまたま目に留まった。

Larrivee オールド ラリビー

 

 

 クラシックギターだった。それも、手放してしまった初代L-28と同じかやや古い物らしい。

 

え? この時代のLarriveeにクラシックギターなんてあったっけ?

 

 高校生当時、食い入るように隅々までながめていたカタログ。そこにクラシックギターは載っていない。それは確かだ。でも……わずかに記憶がある。間に挟まっていた、一枚の価格表。

 

 最上位のL-78(¥950,000-)の次に記載されていたのがL-31 クラシック ¥700,000- 。出品されているのはこれに間違いない!

え?

 

――音楽のジャンルとしては興味の対象外だったので意識していなかったクラシックギター。開始価格は安く、さらには即決価格も定価の1/6

え?

 

――載っていた画像は心底懐かしい記憶を刺激するもので、おそらくL-78、L-28と同年代の希少なLarrivee。初めて見つけた同年代。それがクラシックギター?

え?……え?

 

えぇっ!?

 

 

 完全なる死角からの不意打ちだった。もちろん、興味はある。でも――。悩んだところに、ここ最近頭の中を占めつつあったある考えが追撃をかけてくる。

 

「指弾きの行きつく先って、要するにクラシックギターじゃないのか?」

 

 まさにその通り。指弾きの練習を独学で始めたはいいけれど、やればやるだけ、指弾きも含めた「基礎」全般がまるでなっていなかったことを自覚する破目に――。

 

 そもそも、ギターを弾いていたといっても全く上手ではなく、むしろヘタクソな部類。弾き語りで歌の伴奏が目的だったので、メインはローポジションのコードのかき鳴らしと、他はアルペジオ、スリーフィンガー・ピッキング程度。ハイポジションの華麗なソロとかは無縁。基礎もへったくれもない、我流の極みだ。

 

 指弾きといえば――クラシックギターとか? と、奇しくも本当にクラシックギターの世界の扉をたたこうか逡巡していたところ。もしやるならちゃんとしたレベルのクラシックギターも必要だなぁと思っていたりして。でも、格調高そうで敷居が高い世界だし、クラシック音楽の教養ないし、クラシックギター本体にも何の知識もないし(弦がナイロン? 程度)、選ぶにもまず勉強しないと……みたいな。

 

 そんな躊躇している背中に、強烈な蹴り! まさに渡りに船なタイミングでもあった。抗えぬ運命の意志のようなものに後押しされ、その日のうちに即決で購入。

 

――という経緯で僕の許にやってきたのは「眠れる森の美女」みたいなギターだった。