―後記―　再び出会うはずのない偶然　 

　2008年11月――達成感と喪失感を噛み締めていた。四年にも及ぶ調査の結果、ずっと探していたあのLarrivee L-28 Deluxe Cutawayの正体がついに判明したのである。なのに行き場のない喪失感に囚われる。それが同時に、限りなく見つかる可能性の少ないものであることも実感したからである。この時もう一つわかったこと、やはり一度手放した過去はもう戻らない――。

　こうしてLarrivee探しの旅は終わり、旅の道標となるべく編纂された「Report of Larrivee Guitars」の初版は完成と同時にＰＣのアーカイブに封印されることとなったのである。

　それから10年――いろいろあって、あのLarrivee L-28 Deluxe Cutawayと同じ仕様のモデルが今、手許にある(※1)。再び出会うはずのない偶然、いや、願い続けることの奇跡か――たぶん、ちょっと違う。何も知らないまま出会ってもわからなかったはずである。見かけたことは偶然、でも、見逃さなかったことは偶然ではない。これは、見た瞬間「これだ」とわかるだけの情報が頭の中にあり、常に心の片隅でアンテナを張っていた成果であると思う。最初からこうなることを狙っていたわけではないが、結果的に「Report of Larrivee Guitars」の編纂作業は無駄ではなかったと思っている。

　一度は封印した「Report of Larrivee Guitars」ではあるが、やはり世に出すべきではと思い立った理由もそこにある。こんなふうに僕とLarriveeギターの物語が完結した今、この10年間の新たな情報を加味して再編纂を行ったのがこの「Report of Larrivee Guitars(改訂第2版)」である。それはたぶん、今、これを必要としているはずの、どこかの「僕」のために――。

※1：そして2020年、あろうことかかつて手放したL-28 Deluxe Cutawayそのものとも再会！

—2019.01.29—