スティール弦のアコースティックギターを弾くときに、多くの場面で必要となるのがピックだ。よって、「初心者セット」にはチューナーと一緒にピックも何枚か入っているはずである。
ピックとは弦をはじくために使う道具だが、あまりにも種類が多くて全容がつかめず、違いもよくわからないまま適当に選んでいたりする。だが、実は弾き心地や音にかなりの影響がある道具なので本当はちゃんと自分の演奏スタイルや目指す音に合ったものを使うのが理想だ。
ではどうやって理想のピックを見つけるのかというと、結論としては「色々試してみるしかない」――のだが、それでは身も蓋もないのでここでは僕の場合の話を。
ピックは形、厚さ、素材の組合せによってそれこそ無数の種類が存在していると言っていい。
そんな中でも僕が初心者セットでもらったのは、初心者向けとしては無難中の無難、中庸中の中庸とも言える「トライアングル型、セルロイド製、厚さMedium」だった――。
ここで基本知識。まず、ピックの形状の分類は4つ
・ジャズ型
単音ピッキング向け
・ティアドロップ型
どちらかというと単音ピッキング向けだがコードストロークもこなせる
・トライアングル型
どちらかというとコードストローク向け
・サムピック
親指にはめて使うタイプ
次に、厚さについてはおおまかに
・Thin(0.5mm程度)
・Medium(0.7mm程度)
・Heavy(1mm程度)
・Extra Heavy(1.15mm程度~)
のような分類はあるが、数値で記載されている場合もあり、実際の種類はそれこそ0.01㎜単位で存在する。
スティール弦のアコースティックギターでは、ピックは主にコードストロークに使うので、しなりのあるThin~Mediumあたりの使用者が多い。これより厚くなるとしなりが少なくなり、単音弾きに向く。エレキギタリストはheavy~が多い。また、コードストロークに使う場合、Thinだと弦に負けて「ペリャン」という腰のない独特の音色になる。ただ、これはこれで好む人も多い。単音弾きには向かないかな。
その点、Mediumあたりは適度なしなりでストロークもアルペジオもいけるオールラウンダーと言える。僕の場合も、始めた時からギター再開前まではMediumだったので。
最後に素材について。
・セルロイド
最も一般的な素材。音も弾き心地もこれを標準としてどういう違いがあるか、という比較になる。欠点は減りやすいこと。薄ければ特に割れやすくもなる。
・ナイロン
音が「ナヨン…」といった感じで好みではないのであまり使ったことがない。
・その他
樹脂系で多種多様な素材がある。天然素材や金属のものもある。素材に関しては「なんでもあり」が実際のところである。
さて、「トライアングル型、セルロイド製、厚さMedium」を使っていた僕のピック事情がその後どう変遷したかというと――これが現在使っている「Jim Dunlopのティアドロップ型ウルティム1.0㎜」だ。
なぜこれに行き着いたのか。ギター再開後はクラシックギターを習ったことでそれまでとは弾き方が変わったこと。それに伴ってピックに求める条件も変わったのだった。
スティール弦はクラシックギターのナイロン弦よりはるかに固くテンションも高いので、ナイロン弦の感覚で指で弾いても思ったような音を出せない。逆にスティール弦向けの力加減で弾いているとナイロン弦での微妙なタッチに悪影響が出る。困った。両方弾きたい。それで、スティール弦は指では弾かない、と決めた。そこでピックの出番である。
形は、ストロークを多用しない僕の弾き語りスタイルでちょうどしっくりくるティアドロップ型に変えた。
厚さは、指弾きを意識したものにした。基準は自分の爪。「押弦」という言葉が示す通り、クラシックギターでははじく時にいったん弦を「押し込む」動作が入る。それで、ピックを爪の代わりに使って、スティール弦でこの技術を応用したいと思い立った。すると厚さはMediumでは弱かったのだ。
それで、爪の固さに近いHeavyに変えた。実際は0.9㎜~1.0㎜くらいで、あとは実際に使ってみて判断。最適な厚さは素材や形によって異なるので。ただ、厚さもExtra Heavyまで行くと、僕にはアコースティックギターでは使いこなせない。たった0.15㎜程度の違いだが。
この「ティアドロップ型1.0㎜」で、アルペジオ、スリーフィンガー、ソロの単音弾きはやりやすくなったが、逆にコードストロークがけっこう難しくなった。
多用しないとはいえ、ストロークは随所で使う。アタック時に弦を押し過ぎない、でも弦に負けない適切な、微妙な力加減の調整が必要になるのだ。だが、今ではそれを克服し、使いこなすことで音色やニュアンスはけっこう幅広く調整が可能になった。これは修練の賜物である。
素材については、色々試して行き着いたのがウルティム。爪に最も近いと言われる素材だ。音色がイメージに近いのでこれを愛用している。
Jim Dunlopにしたのは最も入手し易いから。よって、他社のウルティム素材で形状や厚さが微妙に違うものも何種類かストックしてある。
素材は、弦の種類やギターによっても変えることがある。
例えばフォスファーブロンズ弦にはウルティムだが、ブロンズ弦やエレキにトーテックス素材を使うことが多い。これは単に音色の好みだ。
まだまだ試していない素材も多い。機会があれば色々試したいと思っている。
ところで、これはピック全般に言えることだが、安価で気兼ねなく買えるし、買う以外にもおまけでついてきたりで、増える一方の無限増殖地獄に陥りがちだ。
特に、僕が使っているトーテックスもウルティムも割れることがほぼないうえに減りにくいというか、減って形状が変わったやつもそれなりに使えてしまうので、ほとんど廃棄することがない。ピックは失くすか人にあげたりしない限り数が減らないのである。
たぶん、今すぐピックの供給が途絶えたとしても一生困らないだけ手許にあるかも。。。
<理想のピックとは~完>
2021.10.15