二代目の復権  

◆見習い魔女の役回り

 

 時は遡って2008年。ちょうどLarrivee L-10が海を渡ってやって来た頃の話。

 ▸魔女は海を渡るか?

 

この L-10にはボディエンドとヒールエンドに後付けのストラップピンが打ってあった。

 

L-10 Deluxe 1978 ヒールエンド部のストラップピン
L-10 Deluxe 1978 ヒールエンド部のストラップピン

 元々、Larriveeのギターにはストラップピンの類は一切付いていない。ストラップを付けられないから、当然、立って演奏することができない。ただ、部屋で弾きこもる分には不要なので、後から付けようなんて気も全く無かったのだけれど。 

 

 そういえば、ギター再開後は立って弾いたことなかったよなぁ……。

 

 せっかくなのでL-10にストラップを付けて立って弾いてみた。久しぶりだけど、けっこうイイ感じだ。ちょっと新鮮な気分だった。

 

 

 ふと思う。もしかすると今後は活動の延長上に、立って弾く場面が生じるかもしれない(※1)。でも、ストラップを付けるにはギターに穴を開けなきゃならない。それはちょっと、躊躇してしまう行為だ。

※1:予感当たり! 翌2009年に弾き語り活動を再開することになる。

 

 

 ――と、ここで存在が急浮上したのがLarrivee C-05 Eagle Special。2004年末、ギター再開時にいろいろ考えて購入した記念すべきギターだ。しかし、その後は大魔女クラスのLarriveeギターが増えるに従い、弾く頻度が徐々に減ってしまっていた。

"二代目" C-05 Eagle Special 1998
"二代目" C-05 Eagle Special 1998

 

 C-05は、特別仕様でインレイ装飾が施されてはいるけれど、グレード的には「Standard」の見習い魔女クラス。有事の際には現場の最前線に投入されるべき立場である。そこで、こいつをストラップ仕様にしてやろうか? と思い立った。

 

 間髪いれず、じゃあどうせならステージ仕様にしてしまえば出番も復活するのでは――。

 

 ひらめいた。そう、ピックアップ(※2)を付けるのだ! これはとても良いアイディアに思えた。

※2:ピックアップとは、ギターの「音」を拾って電気信号に変換する装置。 

 

 そんな経緯で、ここにC-05をエレアコ化によって復権させてやろう、というプロジェクトがスタートする。 

 

◆エレアコ化計画

 

 久々にC-05 Eagle Specialをじっくり弾いてみた。 

 

 良い! 実に良い! 

 

 このC-05 Eagle Specialはギター再開後の「標準」だった。新たなLarriveeが現れるたび、その良し悪しを判断する比較基準がこの音になっていた。やはりこいつは良い音を奏でる。近代Larriveeの典型のような鳴り方だと思う。特徴があるとすればサイド・バックがマホガニーの音色か? いずれにしてもこの音はとても気に入っている。 

 

 こんなにいいギターの弾く機会が減っているのは寂しいことだ。ギターの加工に少々躊躇していたが、これで完全に吹っ切れた。 

 

 

 早速Ramzy'sへ。まずはピックアップの選定だ。はっきり言って知識は全く無い。 

 

 おぼろげなイメージとしては――

 ・ピックアップが目に見えるのはNG 

 ・生音が犠牲になるのはNG 

 ・ギターに大きな加工が必要なのはNG 

 ということ。 

 

 事前に調べて、いくつかの候補はあった。それらの評判も含めて実際はどうなのか、アドバイスと、できれば実際の音を聴いてみたい。 

 

 

 さて、平日の夜にRamzy'zに行くのは初めてだ。いつもは週末の昼頃にしか現れない僕がドアを開けると、意外そうな顔で店長が出迎えてくれた。

 

 幸いなことに、Ramzy'sにはたまたま、それらが付いているギターがあった(Martinだが……)。これはラッキー! 試奏し、聞き比べてみた。 

 

 ……ふむ。 

 

 その場での検討の結果、L.R.BaggsのiBEAMというピックアップに決めた。エンドピンジャックの加工は必要になるが、ストラップピンを打とうとしていたのでこれは問題ない。 

 

L.R.Baggs iBEAM

https://jes1988.com/lrbaggs/piezo.html

↑「iBEAM」はページ中ほど

 

 あとはプリアンプ内臓のActive型か、プリアンプなしのPassive型か、の選択だけれど――ギター内部に余計な配線と電池の取り付けが増えるActive型はあまり気が進まない。ただ、Passive型だと外部に別体でプリアンプという音信号を増幅する機器が必要になる。 

 

 プリアンプ――そう、プリアンプの重要性はオーディオ機器で痛いほど分かっている。iBEAM Activeに付属する内部プリアンプはエンドピン型だ。その大きさと値段から考えてオモチャに等しい感じがする。ピックアップの使用頻度は? と考えると今のところ出番は少なく、普段の生音重視だ。 

 

 こうなると答えは決まる。Passive型だ。プリアンプはまた後で考えよう。 

 

 それを注文し、取り着けてもらった。

ヒールエンドのストラップピン
ヒールエンドのストラップピン
iBEAMの出力ジャック(エンドピン型)
iBEAMの出力ジャック(エンドピン型)

 

 iBEAM本体は表板裏側のボディ内部に装着されているので、見た目はストラップ・ピンが付いただけに見える。が、そのエンドピンはジャックを兼ねた構造で、太い。 

 

 試しにそのままアンプにつないでみると――音がほとんど聞こえない。予想以上に出力が小さいようで、これはやはりプリアンプ必須だ。

 

 調べてみると、iBEAM Passiveの出力は他のピックアップに比べて群を抜いて小さく、対応できるプリアンプも限られていることがわかった。結局、同じL.R.BaggsのPara Acoustic D.Iというプリアンプを購入。

L.R.BaggsのPara Acoustic D.I こいつを通さないと音が鳴らない!
L.R.BaggsのPara Acoustic D.I こいつを通さないと音が鳴らない!

 

◆二代目復権!

 

 これにてC-05 Eagle Specialは無事にエレアコ化完了! こいつの出番が来るかどうかは――僕次第だ。と、この時(2008年)の僕は思った。 

 

 

 これがたまたまなのか、先見の明なのか……翌年の弾語り再開時から現在まで、C-05は最も出動機会の多いギターの一本になっている。特に、生音じゃない会場では必須のギターだ。

 

 なにせ、手持ちのLarriveeの中で、唯一のエレアコ仕様なのだから。

 

<完>