魔道記~外伝(非・魔物ギター編)

理想のES-Les Paul  

 2016年2月――。

 

 カッコイイ、軽い、音がイイ、おまけに生音もそこそこ大きい、と僕にとってはイイこと尽くしの ES-Les Paul Ebony Blackであるが、唯一気に入らない部分があった。

 

 それは、ボディのFホール。

 

 見慣れないから、という理由もあるけれど、レスポールにFホールは合わないのでは? と個人的には思っている。単純に好みの問題だと思うけれど。

 

ES-Les Paul Ebony BlackのFホール
ES-Les Paul Ebony BlackのFホール

 Fホールのルーツはバイオリン系の楽器にある「f」の文字の形状の穴。音量を出すためのサウンドホールである。これが「箱モノ」のエレキ・ギターにも伝統的に引き継がれていて、ES-Les Paulにもある。そしてこのFホール、ボディーが黒だとそれほど目立たないが、他の色だとやたらと強調される感がある。そこが気に入らない。

 

 もしレスポールを買うなら、本来なら木目の見えるバースト系の色がいいなと思っていた。というのは、初めてエレキギターを弾いた(触った)時、色々と衝撃的な発見があったことは以前にも書いたが、木目があったことが少なからぬ驚きだったから。

 

 最初に弾いたAria Pro IIのレスポールタイプ。エレキギターが木でできている事実に覚えた違和感。ロックなのに木? それはバリバリ金属的なロックのエレキサウンドと「木」のイメージが全く結びついていなかったことによる思い込み。でもしばらくして納得した。エレキギターもやっぱりギターなんだと。思えば酷い偏見だった。そして、アコースティックギターとは雰囲気の違うその曲線の木目にも心惹かれるものがあったのだ。

 

 よって、ES-Les Paulの存在を知った時も、先ずは木目の見えるバースト系の色をチェックしたのだが、ES-Les Paulに関してはその色だとFホールが異様に目立つ。なんだかバイオリンの出来損ないみたいに思えてしまう。それでES-Les Paulは黒にした。黒は好きなのと、たまたま中古で出物があったことも大きいのだけれど。

 

 

 実は「箱モノ」のエレキギターでも、特別仕様でFホールなしのモデルがある。代表的なのはES-335のBBキングのモデル。

 

参考:https://guitar-hakase.com/1582/

 

 ココに載っている「Lucille(ルシール)」のように、ES-Les PaulもFホールなしで外観からは見分けがつかないモデルが出ないかなぁ、と思ってチェックしていたら――出た。限定モデル!

 

「Gibson Memphis / 2016 Limited ES-Les Paul Standard Light Burst」

 https://www.ishibashi.co.jp/sale-event/12501

 

 Fホールなし、適度に虎杢な木目がとっても僕好みな、いかにもレスポールな外観――思い描いていた理想のES-Les Paulがまさしくそこにあった。 

見た目は変哲のない普通のレスポール
見た目は変哲のない普通のレスポール
この杢目がお気に入り
この杢目がお気に入り

 

 一見するとソリッドのレスポールとほぼ見分けがつかないので、持った瞬間にその軽さに驚愕することになる。Fホールがないので、ソリッドのレスポールと同様、メンテナンス用の穴が裏板にある。これも見分けがつかない。バックにビンディングがあるかないかくらいしか見分けるポイントがない。

(裏板:カバーを外した状態)
(裏板:カバーを外した状態)

 

 ES-Les Paul Ebony Blackと比べると、重さはES-Les Paul Ebony Blackより若干重く、Fホールがない分、生音はES-Les Paul Ebony Blackの方が大きい。アンプを通した音はEbony Blackより深みがあるというか、艶やかさがあり、もちろん箱鳴りも申し分ない

 

 このES-Les Paul Standardは、全部合わせても日本に十本程度しか入ってこなかったであろう希少なモデルの中の、おそらく日本に上陸した最初の一本目である。2016年モデルだが最初期であるため2015年製。エレキ弾きでもない僕が持っているという事実が、このギターの特殊性を物語っているようである。

 

 ES-Les Paul Ebony Blackの方は実践仕様に外観を変更しまくっているが、こちらは基本的にオリジナルのまま使っていこうと思っている。さて、いつデビューさせようか……。

 

 

 ところでES-Les Paulは2015年登場で、2016年まで新モデルが出ていたが2017年には公式カタログからは早くも姿を消した。製造元のMemphis工場売却によりラインナップ縮小のあおりか、更にはGibson倒産の影響なのか――もしかするとES-Les Paul自体が希少なモデルとなってしまうかもしれない。

 

 

<完>

 

メンテナンスホールのカバーを外すと、内部がセミアコであることがわかる(家弾きで生音増大のためにカバーを開けてある)。


【スペック】 

ボディ・トップ&バック:3Ply Maple/Poplar/Maple 

ネック:Mahogany Neck/Rounded "C" Neck Profile

指板:Hand-selected Dark Rosewood 

ペグ:Kluson Single Ring with Tulip 

ピックアップ:MHS Humbucker×2