2020年の衝撃  

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 究極の魔女が我が家に来て以来――ことLarriveeのギターに関する限り、不思議な出来事が続いている。2016年、最後の魔女が我が家にやって来た。これで終わりと区切りをつけ、魔道記の締めの章を書き上げたつもりのだが。

 

 どうやら、今もまだそれは終わっていないらしいのである。

 

 最後の魔女を手にしたことにより魔道記は完結。以来、新たなギターに心を奪われることもなく、コンスタントにライブ活動をこなし、平穏に時は流れていた。ところが――

 

 人生を三つの坂にたとえた話がある。「上り坂」と「下り坂」、そして「まさか」という予期せぬ坂。

 

 今回はその「まさか」にまつわる話である。

 

 最初に、近年僕自身に起きた「まさか」の出来事を簡潔に記しておく。まず2018年、まさかの失職にて予定外の主夫生活に突入。その間、自転車でしまなみ海道横断などの旅をしたりそれなりに楽しんだし、本ホームページを立上げ、魔道記やReport of Larrivee Guitarsを再編。予てからの野望だった長編小説も一本書き上げ、小説投稿サイトにもUPした。が、反応は少なく、もちろん食うための手段にはならず。新たな職種への転身を模索したがこれもなかなか上手く行かず、さて、いよいよもって働かねば、というタイミングで仕事の依頼が来たのが2019年末。

 

 これが、もう戻るまいと思っていたまさかの前職の仕事である。だが、背に腹は代えられぬ懐事情と、実際最も実入りが良い仕事であるので、止む無く(?)復職が決定し、2020年1月から社会復帰。ところが、直後にまさかの新型コロナ・パンデミック! 実にギリギリのタイミングだった。復帰が遅れていたら仕事にあぶれていたところだったのである。

 

 4月からは、今回声がかかった本命のプロジェクトに配属。予定からは8月~10月頃に質・量ともにきつい「魔の山」の工程があることが判明していた。おまけに緊急事態宣言で4月下旬からこれもまさかの長期在宅勤務に突入で、現場に居ればちょいちょいと調べられる事がなかなかわからず「魔の山」には準備不足の状態で突入。これまた久々にまさかの「仕事サイボーグ」状態に陥る破目に。  ▸究極の魔女

 

 そういえば究極の魔女を見つけた時もこうして仕事に追われまくっていた時期だったっけ。こういう時って何かいいことあるんだけどなあ――と、虫のいい期待を抱いたりしたが、そう都合よく事が起こるなく、ひたすら眼前の作業をこなす日々が続いた。忙しいことは忙しいが、想定外の事態に振り回されることもなく、平和と言えば平和であった。

 

 近年は予期せぬまさかの出来事が続いていたけれど、さすがにそろそろ落ち着いたかな――そう思い始めた10月中旬、やっと魔の山を抜けた。

 

 

 ここで、スケジュールに余裕が出来たこともあり、さて次の目標は――音楽活動再開である。

 

 ただ、状況は? と言うと、ライブ活動は完全にストップ。唯一の外部との交流の場でもあった歌仲間達とも疎遠になり、活動と言えば日々の練習のみ。単なるルーチン。それは辛うじて現状維持のレベル。しかし、時が前に進んでいるのだから、その場に留まることはすなわち緩やかな退化なのである。

 

 日々の塵はうっすらと降り積もり続ける。一日分のそれはほんのわずかでも、長く時がたてばとてつもない量になる。活動を開始しようにも、まずはやらなければならない、うずたかく積もった塵を取り除く作業が絶望的に気力を奪うのである。

 

 来年は活動再開……できるのか? と、他人事のように思えてしまう。

 

 すでに、ひょいと近所のコンビニにでも出かけるような感覚での音楽活動再開は難しい状況になってしまっていたのだ。

 

 なのに――「まさか」の魔道記本編の続編が先に、あんな形で再開されようとしていたとは。

  

2020.12.31