3.Larrivee Guitarの時代別考証  

(6) ヴァンクーバー時代後期 1998~2001

 そして1998年。後の2013年まで稼動していたカナダ最後のヴァンクーバー工場が完成する。ここではほぼ全ての工程で機械化・分業化となっていた。今まで時間がかかっていた工程の所要時間が軒並み短縮された、という。それは主に塗装の乾燥に要する時間のことだろう。いつ頃からかはわからないが、塗装はラッカーからグロスフィニッシュというポリウレタン系塗装になった。このあたりは良いか悪いかは別にして確実に音に影響がある。仕様に関しては前工場の時代からほとんど変化はない。

 

 わかっている範囲では、ラベルに印字する内容が変わったことくらいである(ヴァンクーバー時代前期はモデル名とシリアル番号の印字があったが、後期ではこれがなくなった)

 

 この時代のLarriveeギターの品質は非常に安定していて、なおかつ、かなり丈夫で管理・維持が容易だ。  悪い所を探すのが難しいが、あえて言えばこれはもう本当に工業製品なんだなぁ、という印象だ。2005年に現地の工場見学にも行ったが、実際そこは「工場」だった。

ヴァンクーバーのLarrivee工場 (2005年)
ヴァンクーバーのLarrivee工場 (2005年)

 

 人手が要るのは主に組み立ての工程で、木を削ったりするのはほとんど機械が自動で行っている。組み立ても各工程は全て分業化されている。一人が全工程をこなしているというわけではないのだ。工程によっては、新入りの作業員でもたやすくこなせる部分もあれば、例えば、ダヴテイル・ネックの接合工程のように、熟練しなければまかせてもらえない部分もある。(事実、ヴァンクーバー工場ではこの工程をできるのがたった一人だった)

 

 音に関しては魂を揺さぶる魔力には欠ける感があるが、音色、バランス、音量などは文句なくすばらしい。僕のギター再開後の標準がこの時代のLarriveeなのだ。僕の中では「近代Larriveeの音」という位置づけとなっている。

 

 その後、2001年以降は廉価モデルの生産を続けていたこの工場は2013年に閉鎖となり、カナダ製Larriveeはもう作られていない。僕にとってLarriveeといえばカナダのイメージだった。時代の流れとはいえ、寂しさはぬぐえない。

C-05 Eagle Special 1998
C-05 Eagle Special 1998