(3) モデルラインナップの変遷
①トロント時代
トロント時代は恐らく明確なモデルの区別が無く、正式なラインナップは存在しなかったと思われる(シリアルナンバーもなく、管理もされていなかった)。1976年頃になって、後のビクトリア時代のラインナップに近いものが出来上がったと推測する。
②ビクトリア時代
ビクトリア移転後の初期ラインアップは下記の通り(代理店:㈱共和商会)
STANDARD
・サウンドホールの寄木細工のロゼッタ、ラージドットの指板ポジションマーク以外は何の装飾も無い
・モデル09、11 (09と11の違いはよく分からない)
INLAY
・STANDARDとの違いはヘッドのAnimalインレイと指板ポジションのインレイ。
・モデル19、27(カッタウェイ)、41(12弦)
DELUXE
・INLAYとの違いはヘッドの縁取りラインとボディ表板周りのアヴァロンインレイ、ブリッジのインレイ。
・表板材も違う。ただし、1980年代になると表板材は同じになったかもしれない。
・モデル10、28(カッタウェイ)、42(12弦)
PRESENTATION
・DELUXEとの違いはヘッドのHumanインレイ、サウンドホールのアヴァロンロゼッタ、ボディサイド・バックのアヴァロンインレイ、ブリッジの材質(象牙)及び、材のグレード(最高級)
・モデル78(カッタウェイ) 72(ノンカッタウェイ(型番は推測))
CLASSICAL ・ナイロン弦のクラシックギター。
・表板がジャーマンスプルースのモデル(31)とアメリカンレッドシダーのモデル(32)がある。
・材のグレードは恐らくPRESENTATIONと同等の最高級
・モデル31、32
当初のラインナップはSTANDARD(09)とDELUXE(10)だったのが、ディーラーの要望でこれらの中間仕様モデルが加わった。これがINLAYシリーズ。09、10とすでに続き番号の型番があり、このため仕方なく型番は19となった。
プライスリストの参考価格(当時価格)
L-09 スタンダード ¥398,000
L-11 スタンダード ¥400,000
L-19 インレイ ¥450,000
L-41 インレイ12弦 ¥500,000
L-27 インレイカッタウェイ ¥550,000
L-10 デラックス ¥500,000
L-42 デラックス12弦 ¥550,000
L-28 デラックスカッタウェイ ¥600,000
L-78 プレゼンテーションカッタウェイ ¥950,000
L-31 クラシック ¥700,000
なお、1978年1月の英語版カタログとカナダ国内向けのプライスリストによると、1978年1月段階(ビクトリア移転直後の時点)でのラインナップは下記の通り。
Model U.S.$
L-11 Standard $ 560.-
L-19 Inlay 640.-
L-10 Deluxe 715.-
L-28 Deluxe Cutaway 830.-
L-13 Presentation 1,370.-
L-31 Classic with Spruce Top 560.-
加えて「カタログに掲載されていない新商品」、つまり、1978年に新たにラインナップに加わったと思われる分が下記。
L-26 Cutaway Standard 705.-
L-27 Cutaway Inlay 780.-
L-40 12 String Standard 605.-
L-41 12 String Inlay 690.-
L-12 Presentation with No Cutaway 1,260.-
これらのうち、赤文字と青文字は日本版カタログに掲載されていないモデルである。赤文字の「L-26 Cutaway Standard」と「L-40 12 String Standard」はSTANDARDグレードのカッタウェイと12弦モデルである。これらはカタログにないだけで、日本でも購入は可能だったと思われる。
気になるのは青文字の「L-13 Presentation」と「L-12 Presentation with No Cutaway」であるが、このうち「L-13 Presentation」は日本版での「L-78 Presentation Cutaway」を指していると思われる。というのも、所有しているL-78 Presentation Cutaway 1979のシリアル番号の上2桁(モデル型番)が13となっているからである(「(4) 旧シリアル番号の製造年月判別方法」参照)。このことは、日本版でのL-78が実際には、少なくとも1979年まではL-13というモデル型番だったことを示している。
ではなぜ日本版ではL-78となっているのか。誤ってL-78と表記されたのか、何らかの意図を持って日本ではL-78と表記したのか、または、日本に紹介された1980年頃にはL-78という型番に変更されていたか。考えられるケースはこれらの3つであるが――。
Larriveeの公式ウェブサイトにも当時のPresentationモデルの画像が掲載されているが、ここでのモデル名も「L-78」となっている。
https://www.larrivee.com/archives-artifacts/guitars
このことから、L-13という型番がほとんど認知されていないことも踏まえ、L-78は表記誤りや日本独自の採番ではなく、当初L-13だったのが1980年頃にL-78に変更されたと考えるのが妥当であろうという見解に至る。よって、本ウェブサイトでもこの時代のPresentation Cutawayの型番は、日本版カタログに従ってL-78を採用することとする。
そうなるともう一つの青文字「L-12 Presentation with No Cutaway」は文字通りPRESENTATIONグレードのノンカッタウェイモデルということになり、これもおそらく1980年ころに型番変更になったであろうと思われる。変更後の型番については不明だが、上記のLarriveeの公式ウェブサイトにあるPresentationのノンカッタウェイモデルの画像説明の文言に従って、本ウェブサイトではL-72としている。
ビクトリア時代のスペック表
③ノースヴァンクーバー時代
代理店が㈱ミカドカンパニーに変わった。時期は恐らく暗黒時代後である。
暗黒時代後のアジャスタブルトラスロッド仕様のモデルからラインアップの体系は一新する。それまではボディ形状も含めてのモデル番号だったが、これ以降は「ボディ型-グレード番号」という形式になる。
ノースヴァンクーバー時代のスペック表
実際は上記に加えて「OO(12fジョイント)」「OOO」「D」「J」といった多彩なボディスタイルが存在している。
④ヴァンクーバー時代 ヴァンクーバー時代前期になって、代理店は㈱神田商会に変わった。 基本ラインナップは変わらず、1995年5月当時のライナップは下記の通り
但し、この時期の英語版カタログでは「19(インレイ)」モデル、CS(Cataway Small Body)が載っていることから、実際にはもう少しラインアップは多いはずである。
そしてヴァンクーバー時代後期になると、ラインナップはより細分化される。
ヴァンクーバー時代後期のスペック表
⑤アメリカ時代
アメリカ時代以後は更にモデルチェンジを繰り返し、進化を続けている。
※アメリカ時代についての調査は行っていない。
代理店については近年、㈱キョーリツコーポレーションに変わっている。
↑2019.02.11 代理店業務終了
⑥アニバーサリーモデルについて
Larriveeはこれまでに創立30周年(1997年)、40周年(2007年)、50周年(2017年)にそれぞれアニバーサリーモデルを出している。なお、創立10周年(1977年)の時はビクトリア移転直前の頃、また創立20周年(1987年)は暗黒時代の最中で、アニバーサリーモデルを出せるほどの余裕はなかったのではないかと推測する。