さすらいの大魔女  

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 2010年――。何故、所有者は大魔女を手放したのか? 理由はわからない。所有者のブログ更新自体がぱったり止まったことから推し量るしかないのだが。 

 

 それよりも、その売値に驚いた。

 

¥398,000- 

 

 売れた時より3割以上安い! 時はリーマンショックの渦中のド真ん中、とは言え――。Martinの最上位機種D-45なら、どんなに腐っても¥500,000-を下回ることはないだろう。それを、仮にも同等以上のクラスの大魔女にこの売値とは! 

 

 Larriveeの知識なさ過ぎじゃないのか? 売り元の楽器店も含めて!

 

 だが、楽器店の認識≒一般世間の認識 ということで、知名度がないのは事実だ。悔しいけれど、市場原理の観点では楽器店が正しいかもしれない。

 

 なのに――そんな破格の安値にもかかわらず、大魔女は売れなかった。 

 

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季節は過ぎて、やがて2010年夏――。一時期、「決算セール」で10万円引きになった! 

 

¥398,000- → 期間限定¥298,000-

 

 前回「あからさまな値下げは好ましくない」と書いたが、それは僕が指摘するまでもなく販売店(それも最大手だからね)も十分わかっていることだった。売れないなら値下げするしかないのだが、あくまで「期間限定特価」とすることで、「売値自体を下げるわけじゃないんだよ~」という建前を崩さずに値段を下げるテクニックだと理解した。(実際、セール期間後は元の値段に戻るのだ)

 

  ところで、この値段は下位のDeluxeグレードの中古と同等だぞ! Deluxeグレードを買う値段で最上位のPresentationが買えるんだぞ!   はっきり言って、超破格の お・買・得・!

 

 にもかかわらず、この時も売れ残った――。ど、どうして~?

 

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 時は流れ、2011年1月――冬の決算セール。

 

 ホントのホントに偶然なんだけれど……見つけちゃったんだなぁ。しかも、何故かそれまで出ていた店からではなく、系列の他店のローカル広告でひっそりと売りに出ていた。

 

¥398,000- → 期間限定¥198,000-!

 

 見間違いだと思った。期間限定だが20万円引き! 2010年に再び出たときから見ても半額だ! ええぇ~っ? こ、これは~不良在庫一掃の投売り? いったい何が起こった?

 

 しかも、それまでは「デジマート」等のメジャーな通販サイトに載っていたのに、この告知は系列店限定のサイトに限られていた。デジマート側を探すと、以前の情報のまま更新されておらず、元の販売店から値下げ前の値段(¥398,000-)のまま掲載されている。

 

 何故? まさか、違うギター? いや、それは有り得ない。こんな希少なギターが二つとあるわけがない。 ニセ情報か?

 

 不思議に思って、デジマート側の情報をクリックすると「404 NOT FOUND!」リンク切れ!  ――期間限定特価が正しい情報だった。 

 

 おそらく――系列の販売店間で商品の引継ぎを行ったが、その際に元の販売店側はデジマートの掲載を削除し忘れ、新しい販売店側は何らかの理由でデジマートに告知せず(忘れた?)自店舗のサイトにだけ掲載した、ということだろうか? 夏の決算セールでこのLarriveeの値段が下がったことを知っているのは僕だけではない(はず)。興味があるヤツなら、冬の決算セールでもチェックするはずだ。でも、今回の値下げはデジマート側だけを見てもたぶん気がつかない。

 

 まるで秘密のセールだ……。好意的に捉えると「Larriveeの最上位機種をこんな値段にしちゃって申し訳ない」ってことでこっそり値下げした、とも見れなくはないのだが。 

 

 え? 僕はなんで気付いたかって? 偶然です、偶然。ホントに! 検索サイトで最新情報を拾ったらたまたまローカル広告が網にかかったわけで――言ってみれば「究極の魔女」が知らせた? まさか――まさか。

 

 それより――。数年前、一番最初に出た時の神の値段(¥1,000,000-)から、何と実に1/5以下の値段に! 破格どころではない、超々々々々~破格! 衝撃怒涛の安値である。もはやこれ以上値段が下がることは絶対にない。

 

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 この大魔女が欲しいわけじゃない。本当に欲しかったらもっと以前に手を出してるだろうから。ただ、希少な初期Larriveeの最上位モデルが不良在庫扱いの投売りセール特価とは! 大魔女の扱いとしてはあまりにも不憫ではないか。そこが何より許せなかった。おまけにこの値段――魔女の所有者としてふさわしくない輩の手に落ちる可能性も否定できない。

 

 それから2~3日様子を見守ったが、動く様子はなく――。

 

 ええい! わかったわ! この買値なら将来手放したとしてもほぼ損失なしの値段で売れるだろう、という計算(言い訳)を詳細に検証した上で決断した。「一時預かり」の処遇である。まぁ、とりあえず、我が家へおいで。ここには君の仲間達が居るんだから。

 

 ええ、魔女の駆け込み寺ですよ。大魔女を見守っていたつもりが実は逆に見られていたとか?

 

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 2011年――。こうして古の大魔女は我が家へやってきた。ともかく、次回はいよいよ御対面の巻――。