初代魔女を手放して32年、ギターを再開して12年――初代魔女に纏わる物語の終わる時がやってきた。本当にこれが最後である。
探し求めていた初代魔女――その双子の姉妹
初代魔女探しで最も苦労したのがこのヘッドインレイ。ピンボケの古い写真と記憶だけが頼りだった。「鳥」の図柄だったのは覚えている。EAGLE(イーグル)だと思うが、現行の「FLYING EAGLE」とは違う。当時のカタログにある「OLD EAGLE」が時代的にも雰囲気も似ているのだが、初代魔女の画像は逆向きで、翼の角度も違っていた(翼の角度は現行が近い)。
https://www.larrivee.com/content/24/eagle-ps_940x700.jpg
↑現行の「FLYING EAGLE」 Larrivee公式HPより
Larriveeのヘッドのインレイに関しては「二つと同じものがない」と謳われていたが、基本となるいくつかのパターンはあった。しかし、同じパターンでも個体差があり、また、イレギュラーなインレイもある。長年の調査の結果、ついにネットで記憶と一致する画像を発見。結論として、初代魔女のインレイは「OLD EAGLE」のバリエーションの一つだった。
https://www.larrivee.com/content/57/zzz_940x700.jpg
↑当時のカタログの「OLD EAGLE」 Larrivee公式HPより
現行とは違う古い時代のEagle。初代魔女のインレイは、ここに紹介されているものと違って右向きなのである。
初代魔女の「OLD EAGLE」インレイ。右向きである。
さらに、この最後の魔女のものとは左の翼の角度が違っている
初代魔女と最後の魔女のインレイの微妙な違い――これは意図したものなのだろうか。
著名なメーカーなら製造年と型番が同じギターは見た目も同じだが、当時のLarriveeは、特にインレイに関しては「二つと同じものがない」ことがよくわかる。本物の初代魔女は修理後に海外に売られて行ったらしいので、同じ個体はさすがに手に入らない。それならばせめて見た目と製造年が同じものを、という切なる願いさえ叶わぬほどに「OLD EAGLE」のインレイは希少なものだったのである。
今更だけど、もしかすると初代魔女探しは究極の魔女と出会うより難しいことだったのかもしれない。
さて、やって来た「最後の魔女」Larrivee L-28 DELUXE CUTAWAY、表板の経年焼けはあったがほぼ無傷な美品だった。例によって長年放っておかれていた眠り姫ではあったけれど基本的な状態はすこぶる良く、弦を交換したらそのまま使える感じであった。ただ一か所、サドルが割れていたことを除いて。
いつもならすぐにRamzy'sに入院させるところだが、「今、ちょっと立て込んでいまして……」とのことで仮のサドルを自作して応急処置を行った。
弾いてみる。
!
これは……初代魔女の音はこれしかない、という記憶の中にある通りの超絶美音だった。見た目だけではなく、音さえもイメージそのもの。言葉にならない。
初代魔女が本当に還ってきたんだ、と実感する。