◆「例の違和感」の正体は?
出品者から連絡があった。内容は変哲のない事務的なものであったが――最後の出品者の名前にふと目が留まる。
小林 XX (こばやしたけし)
え? 音楽プロデューサーの小林武史? いや、もちろん違う。「たけし」の漢字が違っている。ただの思い違い? いや、でもこの感覚は――
不思議な既視感。。。
消えない違和感。。。
何か見過ごしていないだろうか?
…
……
……… !( ̄▽ ̄;)
実は、たった一つだけ思いあたることがある。でも、まさか――。
それって、本当にありえないぞ!
◆伝道師の名は。
1980年――。 僕に生涯最大の衝撃を与えたあの雑誌の「究極の魔女」の記事
あの記事の扉写真が全ての始まりだったのだ。そして、続く見開きページの記事本文――
当時、穴の開くほど何度も隅々まで読み返した記事。その最後に執筆者の名前があったのを覚えている。この筆者が「L-27を愛用している」と書いていたことも。そして、その名前がたしか――
本棚から恐る恐る当時の「Guitar Book」を取り出す。すると
(文・小林たけし)
名前こそひらがなであるが……やはり出品者と同じだ。まさか……まさか……ねぇ。
実はこれだけじゃない!
当時のLarriveeカタログがある。
「究極の魔女」が表紙を飾るこのカタログは、僕にとってバイブルのような存在なのだが、そこに「小林たけし」氏はLARRIVEE PLAYERとして写真入りで紹介されているのだ。
そして、その写真で抱えているのが……まさにユニコーン・インレイのL-27!
今回の「例の違和感」の正体はこれなのか? もしそうなら、この出品者はLarrivee日本伝来時の伝道師であり、僕をLarriveeの魔道に陥れた張本人ということになるけれど。
ま・さ・か・!
もちろん、同姓同名の人違いの可能性はある。でも、そうは思えないなぁ。で、この疑問の解決方法は一つしかない。出品者本人に聞いてみることだ。
◆予期せぬ邂逅
僕「ひょっとして小林様は、当時L-78の記事をお書きになった方でしょうか?」
すると――
出品者「当りです。奇遇ですね。」
!!
やはりそうだった。と、いうことは――
僕「この出品物は、当時のカタログに掲載されていた写真で弾いているあのギターですね?」
出「そうです。ブルース・コバーンに影響されてラリビー・ギターを購入しましたが、すぐに音楽嗜好が変わって、あまり演奏しませんでした。20年近くほったらかしにしていましたが、弾かれないのはしのびないのでオークションに出品した次第です。」
・・・
なんという巡り合わせ!
つまり、このギターの正体は――Larriveeの伝道師に仕えた「魔獣・ユニコーン」。「究極の魔女」と並んで「バイブル」に載っている、言わば「使徒」レベルのギターだったのだ!
それが何の因果か、伝説の「魔獣」は伝道師から僕に託されることになったのである――。