魔獣と伝道師  

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◆眠れる魔獣 

 

 2012年夏――久しく経験の無い猛暑の最中、伝説の魔獣が我が家へとやって来た。

 

 20年近くほったらかし――という伝道師の言葉から、何かしらの問題が発生していることが考えられるけれど。まず、どんな外見なのか?

 

 オークション画像の通り、綺麗だ。音は――眠っていたギター特有の鳴りの不足みたいなものは感じるが、まぎれもなく、古のLarriveeトーン。

 

 これだ! 外見もそうだが、この音にこそ僕を魅了する魔性が宿っているのだ。あ~至福の時――。

 

 さて。いつもの素人チェックの結果、ネック、弦高に異常はないようだ。問題は――また裏板ブレーシングのはがれが。「究極の魔女」が来た時と同じ症状とは!

 

 ということで、例によってRamzy'sへ。

 

 

 専門家チェックの結果は、やはり裏板ブレーシングはがれあり。しかも、全8箇所全滅(これも「究極の魔女」の時と同じ)。他は問題なし。 

 

 修理を依頼して、ついでに、戦闘仕様のためのストラップピンも注文した。せっかく伝道師から託されたギターである。第一線の現場でバリバリ使ってあげなきゃ!

 

◆◆

 

 2週間後、連絡があった。なんと、問題発生!

 

 表面の塗装が想像以上に劣化していたらしく、普通は問題ないはずの作業でも修理痕が付いてしまう――。ということで、残り作業を慎重に行わなければならないのと、付いてしまった修理痕の修復のため、長期入院が必至となった。

 

 まぁ……急ぐ理由はないので、この際しっかり治してもらうことに。

 

◆◆◆

 

 そして2013年が明け――戻ってきた。 

 

 これが魔獣・ユニコーン Larrivee L-27 Inlay Cutaway 1980 だ!


1980 Victoria label
1980 Victoria label
ヘッドのユニコーン・インレイ 魔獣の咆哮を聴け!
ヘッドのユニコーン・インレイ 魔獣の咆哮を聴け!

ヘッドのユニコーン・インレイ 魔獣の咆哮を聴け!


フローレンタイン・カッタウェイ。この鋭角感がたまらない!
フローレンタイン・カッタウェイ。この鋭角感がたまらない!

 

◆そして物語は続く

 

 かつて伝道師に仕え、日本のLarrivee伝来黎明期に行動を共にし、その空気を肌で知る者――。今は引退してしまった伝道師の許を離れると決めたとき、次の行き先として何故、僕が選ばれたのだろうか? 

 

 それはわからない。ただ何の因果か、最初の日本版カタログに掲載されている個体のうち2本が今、我が家にある。 

 

 まぁ、1回なら偶然だ! 奇跡だ! で済むかもしれないけど2回目ともなると――偶然とは決して思えない巡り会わせだ。もしかして「究極の魔女」はかつての仲間たちを再集結させよう! なんて考えてるんじゃなかろうか?

 

 冗談ではなく、あながち一笑に付せないところが怖い。

 

 

 

 「究極の魔女」が我が家へ来て以来――魔女にまつわる不思議な物語はまだ続いているようなのである。 

 

 

<完> 

 

Larrivee L-27 Inlay Cutaway 1980

<<仕様>>

 表板:Solid Sitca Spruce 

 側・裏板:Solid Indian Rosewood 

 ネック:One-piece Honduras Mahogany 

 指板:Solid Ebony 

 下駒:Ebony 

 サドル・ナット:Ivory